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中小企業・地域力活性化に尽力して約30年“まいど教授” 関西大学名誉教授 大西正曹 の事務所

コラム「需要を掘り起こそう」 column


 景気は少し上向いてきたとはいえ、依然として日本の中小企業は厳しい経営環境に直面している。特に、来年4月に予定される消費税の3%引き上げは、消費の先取りにより一時的に経済を引き上げるかも知れないが、それ以降は需要の低下により一層経営環境を悪くすると思われる。そこで今一度、1997年の消費税引き上げ時の経済動向を見直す必要がある。その当時、なぜ急速に経済が落ち込んだのか、財政はどのようになったのか等、考慮すべき諸問題は山積している。また、ドイツは消費税に当たる付加価値税を同じ3%引き上げた後もなぜ好調な経済を維持できたのかも分析する必要があろう。

しかし、各企業にとって、予想される需要低下を乗り切るためのポイントとなるのはやはり自らの創意工夫であろう。それについては2005年に上梓した『よみがえる地財産業』で様々な事例を紹介している。そのコンセプトは「地財」の再評価である。「地財」とはある特定の地域や産業・業界、さらには一私企業の中に眠っている技術やノウハウであり、それらを見直し、社会・経済的課題解決のための隠れた財産として掘り起こすことが重要である。成功事例の多くはこれらの見直しを積極的に行なったことが要因になっている。

例えば、阪急電車が経営する「阪急そば」は多くの常連顧客を得て繁盛している。その秘訣は創業以来続けている「本物へのこだわり」である。大阪の老舗店と同じ手法で出汁をつくり、決して手を抜かない手法が評価されている。顧客が求める本物志向に応えたことが人気の秘訣になっている。

兵庫県播磨町の兵神機械工業は84年の歴史を誇る船舶用ポンプメーカーだが、ポンプで培って来た技術を水耕栽培に応用し新たな市場を開拓している。初期投資が従来の10分の1で済み、ハウス設営から設備導入までプロデュースするなど顧客の様々なニーズに応えたワンセット販売をしている。

1950年に西陣織メーカーとして創業した京都の山中産業は、その技術をティーバッグ、ドリップバッグ製造に生かしている。三角錐のテトラ型ティーバッグを開発するなど、消費者の動向に注目して何が不便か、何を改良すれば美味しい飲料を提供できるかを製品に反映させている。

以上の様に、自社が培ってきた地財を「モノ」として見るのではなく、どのような事柄に使えるかを探ることである。さらに、あくまでも顧客満足度を満たすために、製品の精度、品質の向上を図ることである。つまり、良い製品が必ず売れるのではないのであって、顧客が何を求めているかがポイントになるのである。

来年4月以降に予想される需要の低下を乗り切るには、以上のように創意工夫によって新たな需要を掘り起こす視点が必要となるであろう。


大阪市信用金庫『調査季報』2013.10(no.185)



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