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中小企業・地域力活性化に尽力して約30年“まいど教授” 関西大学名誉教授 大西正曹 の事務所

コラム「経済の森を守る――地域金融機関が果たす役割」 column

 鈴木三郎氏(㈱最上インクス代表取締役会長、元京都試作ネット代表)は、日本経済の進展のためには製造業、分けても試作産業の育成が最も重要であり、そのためには以下の3つの条件が必要である主張されている。

 その第一は、特定の地域を「試作バレー」と位置付けることである。京都はそうしたモデルになりうる土地である。日本中、世界中からR&Dを京都に呼んで、開発都市を目指すのである。その研究開発に必要となるのが試作産業である。試作産業を作るとそれは一つのインフラとなり、様々な影響を周囲に波及させる。つまり、京都にR&Dのインフラをつくるのである。

 第二は、中小企業の自立化である。今までのように、図面だけもらって下請け・賃加工をこなすだけでは付加価値は生み出せない。そのため、従来、大企業が担っていた機能を自社でどのように発揮できるかに取り込むことである。例えば、設計やデザイン領域を自社で担う、モノ造りの川上へ食い込んでいくなど、出来るコトに取り組み、増やしていくような自立化が必要である。

 第三は、「経済の森構想」である。この「経済の森」とは、従来、日本の産業は大企業と中小企業が巧みな方法で連携(下請、系列)していた。しかし、近年、大企業の生産拠点がごそっと海外に行ってしまった。これを森で例えると、大木だけ引き抜いて海外に持っていったことに相当する。日本には下草だけが残り、下草に養分を与えていた大木の落ち葉も無くなってきた。

 まず、大木があって落ち葉が落ちる。落ち葉というのは大企業が持っている人的資源、仕事、技術などを指す。例えば、人的資源に関して言えば、定年退職などをした社員のことに当たる。日本の大企業は、定年を迎えた社員に関連する中小企業への就職を斡旋し、それを通して中小企業の技術レベルを向上させてきた。しかし、最近この人的資源を簡単に邪魔者扱いして捨てるようになった。韓国や中国は、そうした日本でゴミと言われていたものを自国へ持っていって、資源化し、技術などを習得していった。
 今後はそれを海外に養分として持っていかれるのではなくて、この日本、この地域にきっちりと根付く方法を考えようということである。そうしないと、せっかくの養分が向こうにばかり役立って、下草を一杯育てて、大木もごそっと抜いて持っていかれるようになってしまう。すると、いつの間にか日本には何もなくなる。そこで、そうした財産を日本国内で十分に活用できるようにする構想が必要と考えた訳である。これは、中小企業のことだけを考えてやっても駄目で、大企業のことだけを考えてやっても駄目である。日本国内で人的資源などがうまく順繰りに回り、それを活かしていく方法を考える構想が「経済の森構想」なのである。

 その中で、地域金融機関が果す役割が地域から問われている。私は、地域金融機関の持てる地財(財産)は取引先の与信機能だと思っている。鈴木氏の提唱される第三の機能こそ地域金融機関が保持できる役割だと思う。人的資源をいかに活かすか、それは長年の企業様との信頼構築過程で見えてくるはずである。中小企業と大手企業をつなぐ機能も大切だが、それと並行して、経済の森が豊かな実りを保つ役割(森守)も地域金融機関が担うべきだと思う。
 その意味で、大阪市信用金庫が長年取り組んでいる、経営者の若手育成塾、大手企業と中小企業を結びつけるプラスワン事業は、この経済の森構想に合致するモデルを提供できる貴重な業務なのである。




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