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中小企業・地域力活性化に尽力して約30年“まいど教授” 関西大学名誉教授 大西正曹 の事務所

コラム「オリンピック後の持続可能な発展を目指し」 column

 約610万枚と約210万枚。何の数字かご存知だろうか? これは先だってリオデジャネイロで開催されたオリンピック・パラリンピックの入場券販売数。大成功と関係者が胸を張る中、国内情勢を反映してか、スタジアムには空席が目立った印象がある。一方、掛け値なしに大賑わいだったのが「ジャパンハウス」。東京大会を見据えてリオ市内に10億円かけて設営されたPR拠点であり、約1千体のひな人形展示、書道や浴衣の体験、日本酒の試飲と、まさに「おもてなし」を体現しているのだ。当初の想定が約2万3000人だったのに対し、実際には約8万2000人もの来場者を迎えたとか。こうした数字からも、開催まで4年を切った東京大会に対する注目度の高さがうかがえる。
 もちろん、観客動員数だけが、大会の良し悪しを決めるわけではない。では、来たるべき東京大会には、どういったビジョンが描かれているのだろうか。公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の運営するサイトをのぞいてみると、「すべての人が自己ベストを目指し(全員が自己ベスト)、一人ひとりが互いを認め合い(多様性と調和)、そして、未来につなげよう(未来への継承)」が基本コンセプトとある。史上最もイノベーティブで、世界にポジティブな改革をもたらす大会とする、とも記されている。こうした文言は、開催に向けての旗印には正解かもしれない。しかし、本来描かれなければならないものは、大会終了後の東京、そして日本のビジョンではないだろうか。
 88年のソウル五輪以降の夏季6大会の成長率を見ると、開催年よりも翌年が上回ったのは、96年のアトランタ大会のみ。ソウル、バルセロナ、シドニー、ギリシャ、北京のいずれにおいても、最高潮なのは開催の前年。次が開催年、その下が翌年であり、いわゆる右肩下がりにあるのが実情だ。
東京大会の閉幕後、日本が文化的な側面も含めた経済成長を続けるためには、言い換えるなら持続可能な国づくりを世界に示すためには、私は4つのキーワードを提言したい。ひとつは「環境循環都市としての姿を鮮明にする」。次に「全国各地に根差した地場産業に光を当てる」。3つ目は「震災復興の過程を広く深く知らしめる」。最後に「中小企業の潜在的なパワーを活かしきる」。これらを組織委、都、政府、そして民間企業がオールジャパンとして足並みをそろえ、着実に前進していくことに活路を見出したい。
 リオ大会では、メダルがリサイクル素材で製作されていることにも注目が集まった。今や、エコロジーは世界の関心事と言えるだろう。そこで考えたのだが、大会で使うあらゆる部材をリサイクル素材で賄ってはどうだろう。各種プリントに再生紙を用いるのはもちろん、デスクや椅子、表彰台などにも廃材を加工して使用するのだ。極端な話、メイン会場となる新国立競技場のすべてを再生材で築き上げれば、全世界に向けて強烈なメッセージを発信できるはずだ。建築デザインが二転三転した負のイメージも、キレイさっぱり払拭できるに違いない。
 森林資源の豊かな日本の特色を生かし、素材の多くに木材を使用。第一次産業の活性化はもちろん、地場産業にも経済的な潤いをもたらすだろう。製造・加工においては、様々な特色ある技術を誇る中小企業の出番である。下町ロケットで脚光を浴びた技術力、その第2エンジンの点火に大いに期待したい。五輪大会後に経済成長が鈍化するというジンクスに打ち勝つ姿と、震災復興の力強い歩みを重ね合わせてアピールできれば最高だ。
 オリンピック・パラリンピックについては、月並みな意見ではあるが、人々に夢を与える存在であるべきと考えている。夢はいつか覚めるものと皮肉るのは容易い。しかし、日本という国には持続可能な発展という夢を実現する資質が存分に備わっていると信じている。東京五輪は通過儀礼であり、その後の日本の姿こそ、全世界から熱い視線を集める対象となってほしいものだ。こうした思いを若き経営者へのエールとして捧げて筆を置く。

大阪シテイ信用金庫『調査季報』2016年10月号



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